神保町シアターの《鉄道映画コレクション》という企画で記録映画『ある機関助手』 (1963年、監督・脚本:土本典昭)を鑑賞。フライヤーには、作品紹介には次のようにあった。この映画をお薦めの理由は「私が大きなスクリーンで観たいから」、と。
名画座でも鉄道映画を集めた企画は聞いたことがない。今回の上映作品はほとんどが鉄道が登場する劇映画だが、本作は国鉄により企画され、岩波映画製作所により制作された記録映画・PR映画である。土本典昭監督の記録映画監督デビュー作としても知られている。
舞台は電化の遅れていた1962年の常磐線。蒸気機関車C62が牽引する上り急行「みちのく」が、遅れを取り戻すために緊迫された状況で上野まで運行される様子を描く。
常磐線の電化により廃止されることが確実な当時の蒸気機関車がいい味を出している。とくに小沼機関助士の鉄道研修所における訓練の回想シーンが興味深い。一見ドキュメンタリータッチの作品であるが、実際に運行されている列車での撮影ではなく、撮影のための機関車を仕立てて、綿密な台本により制作された作品である。
この映画を大きなスクリーンで見る機会はあまりないので満足したが、上映時間37分とは他の劇映画に比べていささか短い。もう1本記録映画と併せて二本立てで上映してほしかった。