先週、新文芸坐の「気になる日本映画達〈アイツラ〉2013」という企画上映で、『少年H』(2013年、監督:降旗康男)を観た。目当ては併映の時代劇映画『蠢動-しゅんどう-』だったので肩の力を抜いて鑑賞。
本作は妹尾河童の自伝的小説の映画化。原作では主人公の老年期まで描かれているが、映画では主人公が15歳でひとり立ちするところで終わる。ちなみ「H」という通称は、主人公の名前が肇(はじめ)であることに由来する。
公開時、テレビ朝日のゴリ押しが痛々しかった記憶があるが映画はそれほどひどくはない。手堅いというか普通である。水谷豊と伊藤蘭の夫婦共演が話題になったが、こちらも想定内というか新たな驚きはない。出演者でよかったのは、「H」役の吉岡竜輝。青年期まで演じているので子役とは言えないだろうが、ちょっと惹かれるものを感じた。
戦争に翻弄される家族という陳腐なテーマは、正直言うといい加減うんざりだったが、その中で見どころを探してみる。まず母親が敬虔なキリスト教信者であることから、当時の信者の家庭の一端が劇中で伺えること。もうひとつは神戸空襲のシーンの焼夷弾の威力である。本当の焼夷弾をどの程度正確に再現できているのか分からないが、なかなかの迫力で一見の価値はあるだろう。
興行成績では成功したとは言えない作品なのですぐにテレビ朝日が放映するだろうから、そのときは観ても損はしないだろう。そんな作品である。