退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『太秦ライムライト』(2014) / 「5万回斬られた男」福本清三の初主演作

新文芸坐の《昨年の邦画話題作を振り返る! 気になる日本映画達〈アイツラ〉2014》で、映画『太秦ライムライト』(2014年、監督:落合賢)を見てきた。「5万回斬られた男」の異名を持つ福本清三の初主演作。彼の自伝的作品とも言える。

数々の時代劇を送り出してきた京都・太秦撮影所を舞台に、時代劇が衰退していくなか、時代劇を縁の下で支えてきた人たちの姿を描く。

太秦ライムライト [DVD]

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  • 出版社/メーカー: TOEI COMPANY,LTD.(TOE)(D)
  • 発売日: 2015/01/21
  • メディア: DVD

冒頭、チャールズ・チャップリンの『ライムライト』をモチーフにした作品だとスクリーンに表示が出るがまったくの蛇足。タイトルみればわかるだろうに……。

太秦撮影所の裏側を少しだけだが覗き見ることができるのは魅力。とくに大部屋役者たちの生活は興味深い。そして時代劇が衰退していき出番が減っていき、役者たちが大部屋役者に見切りをつけて、それぞれの道に進んでいく姿は淋しい。

そうした逆境のなかベテランの斬られ役である香美山清一(福本清三)は、ひらすら木剣を振り斬られる演技を磨く。大きなスクリーンで木剣を振る姿がこれほど絵になる役者はいないだろう。鬼気迫るという言葉がぴったりだ。

ヒロインの新人女優さつきを演じるのは太極拳の経験を持つ山本千尋。動ける女優はいいね。さつきが殺陣を香美山に教わるうちに、いつしか二人は世代を越えて師弟関係になる。

その後、スター女優になり東京で活躍するさつき。撮影のため久しぶりに太秦を訪ねるが、香美山は体を壊して引退した後、故郷に戻っていた。自らの原点を見失っていたことに気づいた彼女は、香美山の故郷を訪ねて再び殺陣の指導を受ける。夕日を背景に剣を振る二人の姿が美しい。
太秦ライムライト

そして二人が共演する映画の撮影に流れ込む。弟子に斬られるために。松方弘樹との殺陣も見応えがあるし、香美山が斬られて終劇となるのも潔いラストで好印象。

ぜひ劇場のスクリーンで見てほしい作品。公開時は上映館が少なくて見逃していたが、今回ようやく見ることできた。東映はもっと応援してくれればいいのに。時代劇ファンは必見です。


映画『太秦ライムライト』予告編 - YouTube