新文芸坐の《昨年の邦画話題作を振り返る! 気になる日本映画達〈アイツラ〉2014》で、映画『超高速!参勤交代』(2014年、監督:本木克英)を見てきた。2011年に第37回城戸賞を受賞した土橋章宏のオリジナル脚本を映画化。
寛政年間。幕府は金山の利権を狙い弱小藩・磐城国湯長谷藩(現在の福島県いわき市のあたり)に、“5日以内に参勤交代せよ”と無理難題を吹っかける。命令にしたがわなければ藩は取り潰しに。藩主(佐々木蔵之介)は、道案内に抜忍・雲隠段蔵(伊原剛志)を雇い、家老(西村雅彦)を含むわずかな家臣を連れて山中を駆け抜けるという奇想天外な手段で江戸を目指す。

- 出版社/メーカー: 松竹
- 発売日: 2014/11/12
- メディア: Blu-ray
新機軸の時代劇。冒頭、東北訛りのナレーションが聞きづらい。これはハズレかと思ったがテンポよくソコソコ面白い。コメディー、人情話、アクションがてんこ盛りになっていて、どれをやりたいのが分からないのは、まるで幕の内弁当のようだ。映画に落ち着きのなさも「超高速」言ったところか。
この映画の魅力は藩主の魅力。朴訥しているが部下思いの人格者。しかも武芸に通じていて強い。現代社会で言えば、部下の掌握術に長けていて、仕事もできる「理想の上司」に喩えることができるだろう。このあたりがウケている理由か。
共演者を見てみると、敵役の老中を演じた陣内孝則はわかりやすい悪役を演じるとさすが上手いし、小藩の家老の西村雅彦も期待通りのコメディアンぶりで脇が安定している。
ただ深田恭子は美人なのだが、場末の飯盛り女の陰影は感じられずに、藩主の側室としてお姫様の衣装のほうがずっと映えるのは惜しい。またヅカ的には、藩主の妹役に舞羽美海が出演していることにも注目したい。
総じて楽しめたが、今後はこうした奇を衒った時代劇ばかりになるのだろうかと危惧もある。これも時代劇が生き残るためにはやむを得ない仕儀なのだろうと思うと淋しくもある。