DVDで映画『小川の辺』(2011年、監督:篠原哲雄)を鑑賞。藤沢周平の短編小説が原作。架空の藩「海坂藩」を舞台にした時代劇映画。
藩随一の使い手である戌井朔之助(東山紀之)は、藩命により藩政を批判し脱藩した佐久間森衛(片岡愛之助)を討つべく彼の潜伏先に向かう。しかし佐久間の妻は朔之助の実妹・田鶴(菊地凛子)だった。
まあこんな話だが、原作の短編小説は未読だが、これだけの短い物語を一本の映画にするに無理があるような気もする。朔之助が佐久間のもとに向かう道中における回想を通して、登場人物の少年少女時代を振り返ったり、佐久間の脱藩の経緯をすべて説明する構成は陳腐で面白みに欠ける。
また朔之助の配下・新蔵(勝地涼)が、街で田鶴をあっさり見つけたのも拍子抜けした。もう少しタメというか演出上の工夫があってもよいのではないか。ここは映画のひとつの山場だったの蛋白すぎる。
それでも東山紀之の武士としての存在感は特筆できる。圧倒的ですらある。クライマックスの殺陣も迫力満点で堪能できた。終わりよければすべてよし、というところか。
ひとつ残念だったのは田鶴のキャスト。なぜ菊地凛子なのか。かつらが似合ってないし、所作もどぎこちない。ラストで朔之助に斬りかかるシーンもどうかと思った。ほかに適当なキャストはいなかったのか。
それでも東山紀之がいまでは貴重な時代劇役者だと確認できたのはよかった。東山の殺陣を再びスクリーンで見たいものである。