新文芸坐の《シネマ・カーテンコール 2015》で、映画『パリよ、永遠に』(2014年、監督:フォルカー・シュレンドルフ)を鑑賞。
- 出版社/メーカー: Happinet(SB)(D)
- 発売日: 2015/09/02
- メディア: Blu-ray
舞台は1944年8月のナチス・ドイツ軍占領下のパリ。連合軍がパリに迫るなか、ドイツ軍・パリ防衛司令官ディートリヒ・フォン・コルティッツ(ニエル・アレストリュプ)と、スウェーデン総領事ノルドリンク(アンドレ・デュソリエ)が、パリ壊滅作戦の阻止をめぐって繰り広げる駆け引きを描く会話劇。実話を基にしている。
コルティッツ将軍は、「パリを破壊せよ」というヒットラーの命令に従うべきか悩む。戦略的な重要性はないというものの軍の命令に従うのは当然だし、さらに命令に違反したら本国の家族に危害が及ぶ恐れがあるという切迫した状況だ。
歴史を振り返ればパリが破壊された事実はないので、もちろんコルティッツ将軍はパリを破壊しないこと選択したことになる。 映画のテロップによれば、将軍の家族は無事ドイツを脱出し、将軍も連合軍に逮捕されるが戦後しばらくして釈放されている。パリを救ったということで賞賛すらされているようだ。
どんなに非人道的な命令でも軍人ならば従わなければいけないのか、それとも拒むべきなのという根本的な問を観客に投げかけている。難しい問題だが、この場合、軍人としては問題があるように思う。
パリが破壊されることで連合軍の進軍速度が鈍るはずだったが、そうはならずにドイツ軍は壊走することになる。これによりドイツ軍には想定以上の被害が出たはずである。多くのパリ市民の生命を助けたが、友軍の被害を増大させてしまったことになる。これで軍人としての本分を果たしたと言えるのだろうか。映画を見たあとそんなことを考えてみた。
舞台で上演された戯曲を映画化した作品であり、主に主人公ふたりのフランス語による会話劇によって構成される。ベテラン俳優の演技は見応えがあるが、演劇を見せられているようで映画の愉しみとしては物足りない。
せっかくの映画なのだから、劇中でナチスのパリ壊滅作戦が説明される場面で、特撮によりパリが壊滅するシーンを再現してほしかった。