1991年に放送されたNHKスペシャル 「電子立国 日本の自叙伝」(全6回)を見た。80年代の終わりに世界を席巻した日本の半導体産業、その流れを生み出した技術者たちの考え方や生き方を追ったドキュメンタリー。昔、電気電子系分野をかじった私は、往時のレジェンドたちが大挙登場していて興味深く見た。
半導体材料や集積回路、マイコンなどの先端技術の発展とともに、戦後の荒廃から電子立国へと成長していった当時の日本の半導体産業の全貌に迫るといった内容だ。
かつて半導体は「産業のコメ」と呼ばれ、貿易摩擦の象徴とされるほど、他国に対して日本が圧倒的優位な地位を占めていた。このドキュメンタリーでは、日本の半導体産業の黎明期から、巨大な半導体工場を建設して、世界市場を席巻する過程を追っていく。上り坂にあったかつて日本の姿である。
個人的には、シャープやカシオなどが激しく競合していた「電卓戦争」(第4回)や、マイクロプロセッサ「Intel 4004」を開発した嶋正利氏らを取り上げられた「8ミリ角のコンピューター」(第5回)がとくに面白かった。
最終回である第6回「ミクロン世界の技術大国」では、半導体産業の裾野の広さが強調されていた。某大手メーカーの半導体工場の年賀会に多くの関連業者たちが一同に集まり、名刺交換する姿が映されている。
半導体製造は、すり合わせが得意な日本人向きに思えたが、またたく間に外国との競争に敗れて日本の半導体業界は衰退してしまった。電子材料や製造装置の分野ではまだ競争力がある企業もあるが、日本に工場がないのではどうしようもない。
どうしてこうも簡単に落ちぶれたしまったのかと思っていると、台湾の半導体製造大手TSMCが、日本に工場を建設するというニュースが流れてきた。日本政府が積極的に誘致してきた成果らしいが、一企業に多額の税金が投じられるのはいかがなものか。
もっとも上に述べたように、半導体産業の裾野は広く日本企業に恩恵があることも期待できる。しかし政府主導で成功するとは思えない。果たしてどうなるのだろうか。
日本の半導体産業が隆盛を誇った時代を懐かしく思うとともに、どうしてこれを維持できなかったのかという点に関心が生まれた。