退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

ドラマスペシャル『ザ・商社』がすごかった

NHK総合で1980年12月に放送されたドラマスペシャル『ザ・商社』(全4話)が再放送されていた。原作は松本清張『空の城』。脚本は大野靖子、演出は和田勉。主演は山崎努

かつて10大商社に数えられた安宅産業の破綻を、実話を基に脚色した経済ドラマ。総合商社のアメリカ支社長・上杉(山崎努)が北米の石油市場に挑む姿を、日本の社内の権力闘争と絡めて描く力作。

80分x4話という尺であるが、CMを入れなければいけない民放とはちがい密度が濃い。それでも主人公・上杉が、なぜ家族を顧みずにあれほど仕事にのめり込むのか、という動機はよくわからない。上杉の濃すぎるギラギラした人物像を描写することには成功しているが、その裏までは描けていない。それにしてもモテモテなのはすごい。女性だけでなく部下からの人望も厚く、とても有能な人物として描かれている。

このドラマの肝は、ピアニスト役と夏目雅子と、そのパトロン役の片岡仁左衛門(13代目)のふたりの出演者であろう。

夏目はこのドラマのなかで上半身裸のヌードシーンを演じている。NHK制作なのにと驚くが、そういう表現が許容されていた時代なのだろう。隔世の感がある。このドラマで「お嬢さん女優」を脱したのか、後に『鬼龍院花子の生涯』(1982年)では濡れ場を体当たりで演じて話題となった。

また歌舞伎役者の片岡のキャスティングも当たっている。安宅英一がモデルという、芸術家のパトロン・美術品コレクターの役を演じている。テレビドラマでこのキャスティングができるのは驚くばかり。片岡の演技は必見。とくに商社が破綻してすべてを失ったあとのシーンがいい。

ラストは実際の事件と同じく、オイルショックが起こったこともあり、商社が投資していた石油事業が破綻して、これが多額の負債となり商社の破綻に至る。ラストで主人公・上杉は、廃墟となった石油プラントで「おれは日本人じゃない」と言って幕となる。日本人のアイデンティティが唐突に出てきて驚かされる。伏線あったのかなぁ……。

それ以前に上杉のやらかしたことは特別背任じゃないのかと思うが、そうした後始末はなしにドラマは終了する。まあ細かいことは気にしないのがいいのだろう。

総じて豪華出演陣に加えて、4か国の海外ロケを敢行した贅沢なドラマ。テレビの黄金期を象徴するかのような見応えのあるドラマだった。