退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『北京原人 Who are you?』(1997) / 片岡礼子を愛でるだけの映画

新文芸坐の《「映画監督 佐藤純彌 映画よ憤怒の河を渉れ」刊行記念 プログラムピクチャーから大作映画まで 映画の職人〈アルチザン〉 佐藤純彌》という企画で映画『北京原人 Who are you?』(1997年)を鑑賞する。本命は『君よ憤怒の河を渉れ』だったが、時間がとれたので併映の本作も見てみた。カルト映画として知られる作品で、今回新しい発見があるかと思ったがそんなはずない。

最近、受精卵のゲノム編集など生命科学が話題になっているが、この映画は、北京原人の頭蓋骨の化石から取り出したDNAを基に、北京原人を50万年の時を超えて現代に復元させるという荒唐無稽な話。甦った北京原人陸上競技大会に出て、並外れた身体能力を発揮して世間を騒がせる。しかし中国政府は、北京原人は我が国のものだと主張して、北京原人を中国に連れ去ってしまう。故郷である中国に戻った北京原人は、北京原人に心を寄せる研究員たちにより、突如出現したマンモスとともに解放されるのだった。

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女優は「芸術なら脱ぎます」とよくいうが、この作品ほど脱ぐことに必然性のない映画もないだろう。北京原人を追って無人島に到着した二人の研究員、緒形直人片岡礼子が、北京原人の警戒心を解くために思いついたこと。それは「服を脱げばいいんじゃないか」という発想。早速、ふたりでパンツ一丁になる。当然、片岡礼子は上半身を露出し劇場に失笑が漏れる。

その後も片岡は北京原人にレイプされそうになるシーンも演じている。これは未遂で終わるが、どうせやるなら衣服が破かれて上半身露出するぐらいのところまで踏み込んでほしかった。

ほかにも、研究所の理事長が丹波哲郎だったり、マンモス復元の責任者が佐藤蛾次郎だったり、キャスティングにも謎が多い。深く考えるずに楽しめばいいかもしれないが、あまりにバカバカしくて乗れない。さすがに公開時の興行成績は芳しくなく、早々に上映が打ち切られている。

佐藤純彌早坂暁が組んでいるのに、まったく何を考えて作ったのかわからない映画になったのは不思議でならない。今回の佐藤純彌の特集上映は書籍の刊行を記念したものだが、この本には何かヒントがあるのだろうか。

タイトルの「Who are you?」は、この企画を通した人に問いかけたい言葉である。まあネタとして一度は見ておくとよいかもしれない。ウパー。

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