退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

柴門ふみのコミック「あすなろ白書」を読んでみた

柴門ふみのコミック「あすなろ白書」(文庫版・全4巻)を読んでみた。1992年から1993年にかけて雑誌「ビッグコミックスピリッツ」に連載され、1993年にテレビドラマ化されてフジテレビ系の「月9」枠で放送されている。

あすなろ白書 文庫版 コミック 全4巻完結セット (小学館文庫)

女子大生・なるみを中心にした男女5人による青春群像劇。なるみと保の恋愛を中心に、二人の周囲の人間模様が鮮烈に描かれる。最初に5人が知り合うのは予備校の講習会で、「あすなろ会」というサークルを結成する。その後、5人は大学生活を送り、やがて社会に出るが……。

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コミックで群像劇を描くのは難しくあまり成功例がないように思うが、この作品は緻密の構成されていて、ほとんど破綻がなくよくできている。彼ら、とくに保がかなり優秀で現実離れしているような気もするが、お茶の水女子大学出身の筆者にとっては日常的な風景だったのかもしれない。

さまざまなストーリーが重層的に進んでいくが、いちばん好きなのは保が、京都で知り合った年上の女性と同性して、がんが再発した彼女が入院する前に山荘で過ごすエピソード。その後、彼女は死んでしまうが、出したと思われた婚姻届は結局出しておらず、莫大な遺産も受け取らないという流れがいい。

結局、なるみと保がよりを戻して、結婚して子どもをつくり幸せに暮らしました、というのは予定調和的で穏やかすぎる結末にも思えるが、読後の後味はいい。

ひさしぶりに読んだが、いまはなるみの上司の社長に思い入れてしまう。それだけ歳を取ったということだろう。

余談だが、テレビドラマの5人のキャスティングは以下のとおり。西島秀俊が出演していたのには驚いた。ドラマをちょっとだけ見たみたいが、古いテレビドラマを見れるようにならないかしらん。