退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『教誨師』(2018) / 大杉漣の最後の主演映画

DVDで映画『教誨師』(2018年、脚本・監督:佐向大)を鑑賞。大杉漣の最後の主演映画で、プロデューサーも務めている。

半年前から死刑囚の教誨師を務めるプロテスタント牧師・佐伯(大杉漣)は、強い個性をもつ6人の死刑囚と面会する。佐伯は死刑囚たちに聖書の言葉を伝え、彼らに寄り添い話に耳を傾け、悔い改めることで安らかな最期を迎えられるよう対話を重ねる。しかし、佐伯は、死刑囚たちに自分の言葉が本当に届いているのか疑問を感じるようになる……。


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映画のほとんどが、教誨師と死刑囚たちの拘置所内での会話で構成されている、会話劇を中心とした映画である。それぞれの死刑囚にフォーカスを当てた別個のストーリーのオムニバスではなく、6人の死刑囚との会話が有機的に絡み合うように構成されている凝った脚本である。

映画を見ている間、いろいろと考えせられる映画である。そう気軽に見れる映画ではないが、映画らしい映画であり見応えがある。やはり最後はどうしても死刑制度そのものの是非について考えさせられる。

出演者のなかでは、若い男性の死刑囚を演じた玉置玲央が印象に残った。映画初出演だったという。今後注目したい俳優である。また主役の大杉漣は静かな牧師役なので怪演を披露するわけでない。これが最後の主演映画だとすれば、もっと弾けた役を見たかったという思いもあるが、これはこれで大杉漣らしいかもしれない。

まあ個人的な好みを言えば、もう少しキリスト教の教義を強めに打ち出してほしい。宗教と死刑囚との関係をシリアスに描いてほしかった。