尾身会長が2日、国会答弁で「今の状況で五輪開催は普通はない」との認識を示したことが波紋を呼んでいる。
尾身会長らは東京オリンピック・パラリンピック開催による感染拡大リスクに関する提言を出す方向で準備しているが、これに対して田村憲久厚生労働相は4日の閣議後記者会見で「参考にするものは取り入れていくが、自主的な研究の成果の発表だと受け止める」と述べた。
「参考にすると」と言葉を選んでいるが、尾身会長からの提案が出る前から「自主的な研究」だからと聞く耳は持たないということを言外に示唆していおり、先手を打ったと捉えていい。慇懃無礼にもほどがある。
これまで、ことあるごとに「専門家の意見を参考して」と言っていたが、ついに専門家の意見を無視して東京五輪の強行開催に踏み込むことになる。東京五輪開催が、新型コロナ感染拡大防止にどのような悪影響が出るのかわからないが、菅政権がこの責任を負うことが明確になったことはよかった。
いずれにせよ国民の多くは「今の状況で五輪開催は普通はない」という意見のほうが腑に落ちるのではないか。国民には不要不急の外出をしないように求めている一方で、東京五輪という運動会でお祭り騒ぎとはいかがなものか。