俳優の田中邦衛さんの訃報が届いた。88歳だった。
個性派俳優と呼ぶのがぴったり。モノマネ芸人にマネされるほど特徴的なキャラクターだった。映画などでスクリーンに登場するとすぐにわかる俳優はそれほど多くはないだろう。最近このような個性派最優はめっきり見なくなった。
田中さんは、映画「若大将」シリーズの青大将役、テレビドラマ「北の国から」の黒板五郎役などで知られている。
映画「若大将」シリーズは優等生的すぎる映画であり、当時の風俗を垣間見る以外に見どころはなく、いま見てもさほど面白くない。また「青大将」こと田中邦衛も、終始、主演・加山雄三の引き立て役であり、かなり無理をして演技しているように見える。田中本人も本意ではなかったのではないか。
一方テレビドラマ「北の国から」は、田中邦衛さんの代表作と言うのにふさわしい。偶然にも私は数か月前からDVDで連続ドラマ(全24話)を少しずつ見直している最中である。だんぜんオススメしたい。いまの人が見るとどうだけわからないが、時代を超えた普遍性のあるテーマを扱っているので令和の時代にも見るべきものがあるように思える。ちなみに、どこまで進んだかという言うと、原田美枝子が演じる小学校の先生がある事件により左遷されるところである。
この他で数ある田中邦衛さんの映画出演作のなかからオススメを3つあげてみたい。
黒木太郎の愛と冒険 (1977年、森崎東)
貴重な田中邦衛の主演作。森崎東監督によるATG作品であり、シニカルな人生賛歌を高らかに謳い上げる名作。
田中はスタントマン役。森崎東らしさが全開のクセのある映画だが面白い。
福耳 (2003年、瀧川治水)
宮藤官九郎の初主演映画。田中邦衛はクドカンに取り憑いた急死したばかりの老人を好演。クドカンが演じる田中邦衛のモノマネが絶品だし、これに応じる田中もベテランの味を見せている。ちょっと設定が入り組んだ喜劇だが、田中さんの追悼作品としては悪くない。