退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【読書感想】さーたり、中山哲夫『感染症とワクチンについて専門家の父に聞いてみた』(KADOKAWA、2020年)

外科医で漫画家、3児の母であるさーたりが、ウイルス学の専門家である父に取材して描いたコミックエッセイ

ちょうど感染症やウイルス、ワクチン、免疫についての本を何冊か読んでみようと思っていたところ、本書を見つけた。とりあえずマンガから読んでみようと手に取ったみた。

今回のパンデミックがなければつくられることがなかった本だろうが、COVID-19に特化しているわけでない。マンガでわかる「人間と感染症との闘い」をわかりやすくまとめてある。

絵柄は読みやすくて好みだが、医師の性なのか手書きの説明の書き込みが細かくて、ちょっとしたストレスを感じた。それでもマンガのあとにはわかりやすい解説がついているので致命的な欠点ではない。

読んでいて気になったのは、ワクチンの歴史を振り返るとかなりの失敗を繰り返していること。ワクチン接種を受けた人が副反応で死亡することが何度も繰り返えされている。こうした失敗を経て医学の進歩があるのだろうが、被害者はたまったものではないだろう。

また日本のこうした薬害に対してひときわ敏感であり、海外では義務化されているワクチン接種が日本では任意になっていて、通知すらされないという例もあるという。そうした従来の政府の慎重な姿勢とは対照的に、今回のCOVID-19のワクチン接種をゴリ押ししているの不思議なことである。

ワクチンについては『生ワクチン」と「不活化ワクチン」について章を割いてさまざまな疾病ごとに歴史的経緯を説明していて興味深く読んだ。しかし知りたかった「DNAワクチン」や「mRNAワクチン」の解説がなかったのは残念。遺伝子操作の話があればよかった。

本書のようなコミックエッセイでどのくらいのレベルの知識が得られるのかわからないが、関連書籍を読む際の最初の一冊としては好適ではないか。読み物としてもなかなか面白い。

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