退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『いとはん物語』(1957) / 京マチ子が醜女を演じるレア作品

新文芸の《三回忌追善 大映映画の大輪の華(はな) 京マチ子》という企画上映で映画『いとはん物語』(1957年、監督:伊藤大輔)を鑑賞。原作は北條秀司。DCP上映だった。

いとはん物語 [DVD]

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  • 発売日: 2017/02/24
  • メディア: DVD

大正時代中期の大阪。老舗の扇屋の長女・嘉津(京マチ子)は、器量よしの妹たちとは違い醜女だったが、心根は美しいお嬢さん(いとはん)だった。祭の夜、不良たちにからかわれていた嘉津を、同じ扇屋の番頭・友七(鶴田浩二)が助ける。それをきっかけに嘉津は友七に恋心を抱く。容姿の悪い嘉津を不憫に思った母親おわさ(東山千栄子)は、なんとかこの二人の縁談をまとめようとする。しかし友七にはすでに心に決めた女がいたのだった……。


「いとはん物語」(公開年月日 1957年01月15日) 予告篇(1)

「いとはん物語」(公開年月日 1957年01月15日) 予告篇(2)

当時、既に大映トップ女優だった京マチ子に醜女のメイクをさせる企画がユニーク。夢想の空間の京だけは美しいという演出が面白い。京にはどんな役でも演じきるという女優の矜持がうかがえる。

縁談が決まりそうになり喜ぶ姿、鏡に自分の姿を映して感じる怒りと悲しみなどを見事に表現する京の演技が光る。それだけにラストは切ない。日本映画の黄金期を垣間見れる佳作。

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