退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『ポストマン』(1997) / ケビン・コスナーによるケビン・コスナーのための近未来SF映画

DVDで映画『ポストマン』(1997年)を鑑賞。ケビン・コスナーが監督・製作・主演を務めた近未来SF映画。公開当時、ゴールデンラズベリー賞を総なめにして話題になった。上映時間が3時間近い長尺映画。

戦争により文明が崩壊した近未来。無政府状態になったアメリカでは、絶望に打ちひしがれた者、コミュニティを立ち上げる者、暴力と恐怖で支配者になろうとする者らがうごめいていた。主人公(ケビン・コスナー)は、独裁者が率いるテロリストから逃れたのち、偶然かつての郵便配達の車を見つけて、郵便配達人(ポストマン)になりすまして、郵便を配達して衣食を得るようになるが……。


The Postman - Original Theatrical Trailer

とにかく長い。映画館で観たらうんざりするだろうが、DVDだったので適度に休憩しながら最後まで見ることができた。昔見たより悪くない気がした。娯楽映画のポイントをしっかりと抑えているので、深く考えなければさほど問題はない。

まず「北斗の拳」や「マッドマックス」を思わせる近未来が舞台なのに、なぜか西部劇みたいにもっぱら馬が使われているのは不思議。まあアメリカ映画らしいと言えばそうなのだが、SFを免罪符にすれば、何でもアリになるわけでもないだろう。

良くも悪くも「ケビン・コスナーによるケビン・コスナーのための映画」である。ナルシスト全開で映画としての出来は二の次にしているように思えた。しかも息子や娘まで出演していて家族サービスも忘れていない。とくに息子はいい思い出になっただろうが、観客は置いてきぼりだ。

極めつけはラストシーンのポストマン像の除幕式だ。銅像が現れると悪趣味もここに極まったかの感があった。そもそもそんな短期間で文明を復興できるのかという疑問もあるが、細かいことはどうでもよくなってくる。結局、もうなんだかわからない映画になってしまっている。

それでもハリウッドのスタッフが職人仕事を披露しているので、局所的には映画の楽しみを感じることができる。とくのダムのシーンはなかなか見ごたえがあった。それても先述してとおりとにかく長い。長いわりには人々の思想や国家観などが十分に描けておらず、とても幼稚な映画に思えてくるのはSF映画としては致命的。

「ポストマン」という発想自体は悪くないので、ナルシズムを廃して、SF設定をきちんとやり直してリメイクしてほしいものだ。

ポストマン オリジナル・サウンドトラック