「ひきこもり問題」の第一人者による決定版解説書、という惹句に釣られて読んでみました。同じテーマについて読んだ2冊目の本です。ただタイトルのわりには、中高年にフォーカスしているわけではありません。

- 作者:斎藤 環
- 発売日: 2020/01/30
- メディア: 新書
まず、気になるのは「ひきこもり」の定義です。この本では以下のように定義していました。
- 6か月以上、自宅にひきここもって社会参加がしない状態が持続すること
- ほかの精神障害が第一の原因とは考えにくいこと
この本は、「語りおろし」で筆者にインタビューした内容をライターがまとめたもので、とても読みやすいように工夫されています。とくに「ひきこもりをめぐる10の誤解」はよくまとまっていて、ここを読むだけでも問題を大雑把につかむことができます。ちなみに10の誤解というのは以下のとおりです。
- ひきこもりの人は犯罪を起こす可能性が高い
- ひきこもりは心の病気?
- ひきこもりはネットやゲームばかりしている?
- ひきこもりはほとんどが男性?
- ひきこもりは日本特有の現象?
- ひきもりはやめたくてもいい?
- 親が甘やかすからひきこもりにりなる?
- ひきこもりは自力で治る?
- ひきこもりはスパルタで治る?
- ひこもりの出口は就労?
また「家族のための対応のヒント」という章は、実際にひきこもりを抱えている家庭には助けになると思われます。「ひきこもりは家族主義の国特有の現象。個人主義の国ではホームレス」というのは妙に納得しました。
対応のヒントのなかで面白いなと思ったのは、「小遣いは与えるべき」と勧めている点です。「欲のない人は無敵になる」からでそうです。ピンときませんがそういうものでしょうか。
あと最後まで読んでいくと「えっ」と思ったことがありました。これまで、「ひきこもり」はなんとかしなければならない社会問題だと訴えたいたにも関わらず、最終盤では「ひきこもりもいる明るい社会」を、と謳っているのです。筆者自身も論旨が一貫していないことを認めていますが、読者としては「え、どっちなの?」と思ったものです。
社会のありかたについて述べた最終章はやや駆け足で不満でしたが、新書はだいだいそんなものでしょう。総じてアカデミックな知見に立脚していならも読みやすくて、ひきこもり問題についての理解を深めることができる良書です。オススメします。