遺伝、能力、環境、努力、運という5つをキーワードにして、比較的新しい学術的知見を紹介しながら、いま話題になっている格差問題について考えさせられる本。筆者の解説付きなので、ふだん素人が敬遠しがちなテーマに挑戦できる。
新書860遺伝か、能力か、環境か、努力か、運ナノカ (平凡社新書)
- 作者:俊詔, 橘木
- 発売日: 2017/12/15
- メディア: 新書
ただし新書の体をとっているが、内容は骨があるのでじっくり読む必要がある。さらに興味がある人は参考文献リストを手がかりに深掘りできる。
読後のざっくりとした感想は、思っていたより「遺伝」の影響が大きいということ。分野によっても状況はちがうようだが、ほとんど生まれながらに勝負がついているのだ。残酷かもしれないが、世間から受ける印象とも合致しているように思う。
ただし「遺伝」だけですべてが決まるわけではないことも重要である。「努力」がまったく無駄ではないことは救いかもしれない。もし「遺伝」がすべてだとすれば、もはや生まれながらに選別を行い、見込みがありそうな人だけに教育を授けるような極端な政策も正当化できてしまう。優生思想の温床ともなりかねない。
じゃあどうすればいいのか。筆者はあとがきで以下のように助言している。
大切なことは、自分の能力を冷静に分析して、自分に比較優位のある分野は何であるかを見つけて、できればそれを生かせる分野に進みたい。
さらに子どもが自らそれを見つけるのは困難なので周りの大人の役割が大事だという。なるほどと思うが、これができれば苦労しないよなと言いたくなる。
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