英会話のお手軽なハウツー本ではなく真面目な本です。冒頭から「英語を話すため土台は文法、先立つものは語彙、そして基礎体力は読むことで身につける」と釘を刺されます。まあ当たり前でしょう。

- 作者:鳥飼 玖美子
- 発売日: 2017/02/15
- メディア: 新書
筆者の豊富な経験による数々のエピソードと教訓は示唆に富んでいて読み応えがあります。とくに、相手をどのように呼んでいいのか分からないときは、"How would you like me to call you?"と確認すればいいというのは納得しました。かつての職場で、同僚のWilliamさんが「Billと呼ばないでね」と言っていたのを思い出しました。
また印象に残ったのは、人工知能などの技術が進歩していくなかで英語教育はどうあるべきかという問題です。この本でも、言語のプロフェッショナルは限りなく高度なコミュニケーション能力が求められるでしょうし、専門家でない普通の人は自動翻訳や自動通訳があれば事足りる、と二極化するだろうという見立てが紹介されています。
今後、異文化コミュニケーションの分野だけでなく、人工知能などの発達で社会は根底から改革されそうです。そうした時代では、知識やスキルは最低限の基礎があれば十分で、情報を正しく選択できるような批判的思考能力を備えた人間が必要になってきていると指摘してます。
そのとき英語教育はどうあるべきでしょう。この点については本書では問題提起にとどまっていますが、いずは筆者の具体的な方策を聞いてみたいものです。