退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【読書感想】松田小牧『防大女子 - 究極の男性組織に飛び込んだ女性たち -』(ワニブックスPLUS新書、2021年)

将来の自衛隊幹部を育成する防衛大学校OGが実体験に加え、防大OG、女性自衛官に取材して、「究極の男性組織」である自衛隊防大という特殊な環境に身を置く女性たちの本音に迫る。さらに課題についても言及する。

防大を舞台にした、二階堂ヒカルのマンガ「あおざくら 防衛大学校物語」を読んでいることもあり、興味本位で手にとった。

主に筆者の実体験に基づく冒頭の数章は、「防大女子」という知らない世界を垣間見ることができて読み物としてとても面白い。防大はMARCH程度の学力で入れるそうだが、入校後はロクに勉強していないようだ。こんなオツムの連中が幹部で大丈夫なのかね、というのが第一感である。あまりにも非効率すぎる。

後半では取材に基づく防大OGや女性自衛官の生の声を紹介しつつ、自衛隊の組織としての問題点を指摘している。どの程度の人数が取材に応じてくれたのかわからないが、データ分析がまったくされていない。どの属性の人がどんな意見を持っているのかさっぱりわからない。

さらに問題点には、自衛隊特有の問題と日本社会で共通の問題が混在しているのも気になる。明確に切り分けることは難しいだろうが、もう少し科学的に分析する必要があるだろう。

個人的には、防大を含めて人材育成の効率が悪いなとは思うが、それが「強い軍隊」をつくるために必要なことなのであれば「必要コスト」ということになる。現在のウクライナの状況を見るに、いかに女性にとって働きやすくなろうが、そのために自衛隊が弱くなっては本末転倒である。

一般企業において女性の働き方は企業経営において重要事項のひとつであろうが、軍隊はそれよりも優先すべきことある。極端なことを言えば、特別な法律をつくっても「強い軍隊」のためには、女性の権利は制限されても然るべきである。その視点がこの本には決定的に欠けている。