5月6日までを期限に全国に出されていた緊急事態宣言が月末まで延期される。4日に安倍首相が記者会見で発表した。
感染者数を伝える日々の報道を見ると仕方ないとも思うが、政府は現状を正確を把握しているのか疑問に思えた。データや科学的根拠がほとんど示されなかったからだ。
もちろん首相自らが科学的・疫学的な解説をする必要もないだろう。しかし会見で「専門家の皆様」というフレーズが何度も登場したが、いったい「専門家の皆様」が事態をそのように評価しているのかが、まったく伝わってこない。
専門家というのだから、やはりそれぞれが専門的知見を発揮して、国民に向けて詳細な報告書を提示してほしい。それがあれば他の専門家による検証もできるだろうし、さらに海外からの評価も得られるだろう。いまのところ専門家の意見が反映されて政策が策定されるているのかも怪しい。
会見ではもっぱら「感染者数」が指標として挙がっていたが、これは検査数に依存することは言うまでもない。検査数が少なければ、おのずと感染者数も少なくなる。諸外国と比べて日本の人口あたりの検査数が少ないことがすでに伝えられている。
検査数を増やせばそれでいいのかわからないが、少なくとも現時点までの検査体制が十分なのか、終息を図るためにはいま以上の検査を実施する必要があるのか、よくわからない。会見ではようやく安倍首相はPCR検査を増やす必要性を認めていたが、いまさらかよという思いは強い。
さらに「終息」とみなすことができるための条件も不明確なのも不満。とにかくあらゆるデータを可視化して、国民がなるほどと思える指標を示すことが肝要だろう。いきあたりばったりというか雰囲気で非常事態宣言を延長したり、終了したりされたらたまったものではない。
また会見では、ウイルスをの共存していくための「新たな生活様式」についての言及があったことは注目できる。非常事態宣言のなか、国民は多くのものを失ったが、その代わりにいろいろな発見もあったように思う。とくにリモートワークは注目に値する。
職種によるだろうが、環境整備を勧めていけば、毎朝、皆が満員電車で出勤しなくても業務に支障がないことがわかった人も多いのではないか。コロナ時代の経験を奇貨として、少しでも暮らしやすい社会になればと祈るばかりである。