朝ドラ「スカーレット」は、NHK大阪放送局が制作する2019年下半期放送のNHK「連続テレビ小説」第101作。脚本は水橋文美江(作)。主演は戸田恵梨香。信楽焼で知られる滋賀県信楽を舞台に女性陶芸家の半生を描く。
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大阪局制作の朝ドラは「うーん、どうなのこれ?」というドラマが多いが、このドラマは総じてよかった。とくに主演の戸田恵梨香の演技が際立っていた。子役からバトンタッチされて、セーラー服姿で登場したときは、「これは罰ゲームか? もうひとり挟めよ」と思ったが、中年になってからはさすがだった。
かつて朝ドラは若手女優の登竜門とみなされ、ほとんど演技経験のない女優がヒロインに抜擢されることもあった。その場合、娘時代は初々しくてよいのだが、歳を重ねていくと演技に難があると感じる場合もあった。しかし最近では、経験十分の女優がキャスティングされるようになった。若手の大抜擢も見ていて楽しいが、本作が後半で失速しないで見応えがあったのは、中堅女優が配されたことが大きいだろう。
総じてよくできていたが、いくつかこうだったよかったのにを思うことを挙げる。
まず陶芸の知識がうまく視聴者に伝わってこない点を指摘したい。まあドラマなのだから、陶芸のABCを体系的に紹介するわけにもいかないのだろうが、ドラマを見ているうちに自然に陶芸についての知識が入ってくるような工夫がほしかった。
主人公の川原喜美子が苦労の末に穴窯で自然釉の作品を成功させるところが、ドラマ最大の山場だった。しかし成功したとされる作品が「ん、これでいいのか?」というシロモノで驚いた。どこが素晴らしいのかさっぱりわからない。そもそも日本の陶器にはどんな種類があって、信楽焼はどのあたりに位置しているのがわからないのが不満だった。
次に信楽がどんな場所なのかが伝わってこないのも不満だった。何か郷土を代表するような名物や名所などはなかったのだろうか。セットを往復するばかりでストーリーが進んでいくのが単調に思えた。
ラスト近くで白血業を患った息子・武志(伊藤健太郎)を伴って、みんなで琵琶湖を訪れるシーンがあった。見たかったのはこういうロケシーンだよ、と思った。もっとロケしてよ、ということだ。
あと終わり方にも注文がある。ドラマはは息子がナレーションで死んだことが告げられたあと、喜美子が再び陶芸に励むシーンで終わっていた。いわゆる「おれたたエンド」である。すっきりした終わり方だが、白血病で息子を失った経験をベースに、骨髄バンクをつくるなどの社会活動に身を投じる姿を描くという終わり方もあったのではないか。ちょっとあっさりしすぎではないか。
それでも「大阪にしてはなかなかやるじゃん」という朝ドラだった。十分に及第点です。