退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『座頭市物語』(1962) / 勝新太郎生涯の当たり役・座頭市の記念すべき第1作

新文芸坐の《座頭市 令和に甦る盲目の侠客》で映画『座頭市物語』(1962年、監督:三隅研次)を鑑賞。白黒映画。主演は勝新太郎

座頭市物語 [DVD]

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以後26本も映画が制作され、テレビ時代劇も100作作られた勝新随一の当たり役「座頭市」の第1作。子母澤寛の小編随筆から生まれた異色のダークヒーロー。スクラッチからこのヒーロー像を練り上げた勝はまさに天才。映画は相手役の天知茂との男同士の気持ちが見事に描かれているし、三隅研次の様式美ともいえるモノクロ映像も冴えている。日本映画史上に輝く時代劇映画の傑作。

長く続いたシリーズ物の第1作は優れていることが多いが、座頭市シリーズも例外ではない。シリーズを重ねるとどうしてもマンネリ化してくるが、第1作である本作に当然そうしたことはなくすべてが新鮮。

キャラクターのお披露目の意味もあるだろうが、座頭市が盲目であることにより蔑まれる場面が多い。それに対して座頭市が意地を見せつける場面が小気味よい。座頭市によるアクロバティックな居合はまだなく、燭台のロウソクを切る程度のリアリティを感じられる演出なのもよい。

シリーズ後期にはコミカルな場面も増えてくるが、この映画にはやくざたちの抗争がシリアスに描かれ、観客に人間の愚かさをこれでもかと見せつけてくる。ラストの抗争のあとで、あたり一面が死屍累々になるモノクロ映像に圧倒される。プログラムピクチャーだったのだろうが、風格すら感じさせる一本で映画を見たなという気分にさせてくれる。

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余談だが今回DCPによる上映だと聞いていた。最近デジタル映像で見事に甦った洋画を何本か見ていたので期待していたが、残念ながらそれほどではなかった。もちろんコマ飛びや褪色はなかったのだが、手間をかけて修復された名画とはほ遠く、やっつけ仕事の感が強い。映像もイマイチだが、とくに古い日本映画によくあることだが音声ノイズが気になる。なんとか現代のハイテク技術で改善できないものだろうか。