吉田秋生のコミック「海街diary」(全9巻)を読み終わりました。ストーリーは以下のとおり。
鎌倉市で暮らす三姉妹のもとに、離婚して家を出た父の訃報が届く。三姉妹は山形の葬儀に出席する。そこで中学1年生の異母妹・すずに初めて出会う。すずは母を亡くし、父の再再婚相手の家庭で暮らしていた。三姉妹はそれぞれ父に複雑な思いを抱えていたが、長女・幸は、すずに「鎌倉でいっしょに暮らそう」と誘い、すずは承諾した。四十九日を済ませて、すずが鎌倉にやってきて四姉妹の生活が始まる……。
- 作者: 吉田秋生
- 出版社/メーカー: 小学館
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「行ってくる」というサブタイトルでわかるように、すずは女子サッカーの特待生として掛川の高校に旅立ちます。すずだけなく、他の登場人物もパートナーと結ばれたり、出産したりと、それぞれの人生を歩んでいきます。清々しいラストでした。雑誌連載でダラダラ続けたため、あとで通読すると読むのがツラい作品も少なくありませんが、本作は余韻のあるすばらしいエンディングでした。
それにしても、すずはしっかりして大人なのには驚かされます。自分が高校進学当時、何を考えていたかと思い起こしてみると……。「何も考えていなかった」というのが本音です。やれやれ。
巻末に収録されている後日譚の「番外編」は、私は蛇足に思えましたが、まあ読者からの要望が強かったのでしょう。願わくば後日譚は何年か後にじっくりと描いてほしかった。
私は連載終了後に単行本(最近は電子書籍のことも多い)が揃ってから読むことが多いですが、この「海街diary」は、2015年に是枝裕和監督により実写映画化されたこともあり、完結を待たずに読み始めました。それにしても、映画ですずを演じた広瀬すず(奇しくも同じすず)の演技は素晴らしかったが、その後の大活躍は想像を越えるものでした。
映画もコミックの実写化の数少ない成功例でとてもよかったですが、漫画は、漫画家ひとりが奥深い世界観を創造して世に問えるというのはすごいメディアだと思います。映画やアニメではそうはいきません。そんなことを思わせるほど、すばらしい漫画でした。
最終巻は昨年末に発売されましたが発見が遅れて読むのが遅れました。というのは、「海街diary」の表紙はサブタイトルが目立っていて、何巻かわかりにくかったためです。おそらく書店で見逃していたのでしょう。例えば第9巻(最終巻)の表紙には「行ってくる」というサブタイトルが前面に出ています。店頭ではわかりにくいのですが、本を手にするとそれはそれで趣があります。