退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

漫画家本「あだち充本」を読んでみた

2018年夏に刊行された漫画家研究本の第6弾「あだち充本」を読んでみた。

現在、日本テレビでアニメ「MIX」が放送されていたり、AbemaTVで「タッチ」が配信されていたり、あだち充がちょっとしたマイブームである。

画業50年に達しようというあだち充の超ロングインタビューが目玉。東中野や練馬などのゆかりの場所を訪ねながら、自らの生い立ち、そして全作品について思い出を語っている。資料としても一級品。なかには覚えていないと数行で片付けられる作品もあるが、「ナイン」「タッチ」「みゆき」などの代表作については紙幅を割いていて読み応えがある。

このロングインタビューの間に、豪華対談や歴代担当編集のインタビューなどが収録されている。インタビューを通しで読んでいると、途中何度も「○○ページに続く」といちいち飛ばされるので読みにくい。構成は改善の余地があるのではないか。

インタビューからあだち充がさまざまな人たちに支えられてきたことがわかる。とくに編集担当の力が大きい。「小学館には恩義はないが編集には助けられた」のようなことを語っているのが印象的だった。漫画家として生き残る秘訣なようなものも見えてくる。

たいへん面白く読んだが、惜しむらくは、当時の写真がほとんどないこと。現在のあだち充が当時過ごした場所を訪れた取材時の写真はあるのだが……。小学館のムックなのだから、当時の「お宝写真」がたくさんあるだろうと期待したが、その点は残念だった。さらに豪華対談では、高橋留美子の対談をぜひ実現してほしかった。小学館なら可能だったのではないか。惜しい。

最後のページは、すでに他界している兄・あだち勉が描いたイラストが載っている。兄がいなければ、あだち充は世に出なかったかもしれない。インタビューの端々からも兄への思いが感じれたので、最終ページでホロリとさせられた。

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