退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【読書感想】『永井豪のヴィンテージ漫画館』(河出文庫、2015年)

デビルマン』『マジンガーZ』『キューティーハニー』『バイオレンスジャック』などの作品で知られる、漫画家・永井豪が、自らが往時を振り返りながら、当時の裏話やキャラクターの誕生秘話を文章と漫画で語っている。

元々は某雑誌の連載を1985年に単行本版にまとめられた。本書は、その単行本を底本に大幅加筆された本である。底本は大判だったが本書は文庫サイズなのは残念。

なぜいま永井豪なのかと言うと、私が永井豪が現在連載中の漫画『柳生裸真剣』(既刊3巻)を偶然に読んだからである。柳生十兵衛が「女」という設定。女であることを隠して将軍・家光に剣の指南しているなか、女だとバレたとたんに、将軍が十兵衛を手篭めにしようと襲いかかるが、十兵衛が将軍を打ち倒してしまい、将軍の命により幕府に追われて全国を放浪するという話。裸体全開の痛快時代劇で、変わらない作風に感嘆した。

いい歳なのに頑張ってるなと思った。実際、永井豪のアシスタントであり盟友だった、石川賢は鬼籍に入ったしなぁ……。そこで手に取ったのが積ん読にあった本書である。それぞれの作品の舞台裏はなかなか興味深いし、往時を振り返りながら懐かしく読んだ。

読み終わって痛感したのは、いかに巨匠・永井豪でも作品を発表する場がなければ描きたい作品は描けないということ。駆け出しのときは編集担当の言うがままというのはやむを得ないのだろうが、ヒット作を連発して大成したあとでも、やはり掲載する媒体がないと描きたいものを描けない。考えてみれば、同人誌でもあるまいし、描きたいものを描けないのは当たり前とはいえ苦労してしていることが伺えた。大所帯を抱えて大変だという事情もあるのかもしれない……。