退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『宴』(1967) / 二・二六事件を背景にした悲恋メロドラマ

新文芸坐の《「美しく、狂おしく 岩下志麻の女優道」刊行記念 清純、華麗、妖艶 デビュー60年 女優・岩下志麻 さまざまな貌で魅せる》という企画で、映画『宴』(1969年、監督: 五所平之助)を鑑賞。二・二六事件を背景にした松竹メロドラマ。

陸軍中尉・舘(中山仁)に心を寄せながらも結婚できなかった鈴子(岩下志麻)は、能の家元に嫁ぐが結婚生活はすぐに破綻する。一方、舘は二・二六事件の反乱軍に参加し、ふたりは時代の激流に翻弄されていく……。

ME-037 映画ポスター 「宴うたげ」 五所平之助、岩下志麻 1967年

当時、岩下はすでに松竹のエースの地位を固めていて、相手役の中山は期待の若手という感じだったろうか。岩下は美しさが際立っている。だが二・二六事件を丹念に描くというタイプの映画ではないが、どうも物足りない。肝心のメロドラマも薄味の感は否めない。

映画としてはあまり見どころはないが、ふたりが歌舞伎を観劇したあと、都内が大雪に見舞われて、大雪の中、凍傷にかかるかもしれないと舘が鈴子の足を舐めるシーンが唯一印象に残る。足フェチ必見。

余談だが最近の足舐めシーンと言えば、豊川悦司榮倉奈々が足を舐める映画『娚の一生』(2015年)を思い出す。

映画「娚の一生」【TBSオンデマンド】

結局、鈴子は能の家元から離縁され、暗い結婚生活から開放されるが、舘は二・二六事件に加わり処刑される。その後、鈴子は舘の郷里の海で身投げするという悲恋モノである。

量産プログラムピクチャーのひとつで岩下志麻特集でもなければ上映される機会のない作品かもしれない。