DVDで映画『雪国』(1965年、監督:大庭秀雄)を鑑賞。原作は「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。」という有名なフレーズで知られる 川端康成の小説「雪国」。主演は岩下志麻、木村功。
雪深い温泉町を背景に芸者の駒子(岩下志麻)と翻訳家の島村(木村功)との情愛を描く。原作小説の文学的価値はわからないが、しょせん寂れた温泉街での芸者遊び。これが名作なのかと小1時間問い詰めたい。
この川端の『雪国』は、1957年に東宝が豊田四郎監督で映画化されていて、主演は池部良、岸惠子だった。たしか池部は画家という設定だった。本作と比べてみるのも一興だが、私は、豊田版より大庭版のほうが好きだ。ちょっと面白いのは、本作で島村を演じてる木村功は面影がちょっと川端に似ていること。『伊豆の踊り子』もそうらしいが、自らの体験をもとに創作していることを考えると、川端の容姿に寄せたキャスティングは成功しているように思える。
駒子が、島村に対して「一年に一度田舎芸者の味も悪くない。そうでしょ」と言って、およよと泣き崩れるシーンはちょっといい。当時の温泉芸者がどんなものだったか知らないが、もっと野暮ったく訛りもあっただろうと想像するが、岩下が演じるそれは洗練されすぎている気もする。まあ、リアルな温泉芸者をわざわざスクリーンでみたくない、ということもあろう。
単純な筋立てで、田舎の芸者遊びを描くというだけの映画である。とくに激しい濡れ場のがあるわけでもなく、この著名な文芸作品を映像化する意味はいまでは見いだせない。
あえて見どころをさがせば、岩下志麻の美しさと雪国の風景だろうか。とくに雪国といえば曇天のイメージがあるが、雪国の青空の眩しさは映像として楽しめる。ただしロケ地は撮影当時の風景だし、これを戦前とするのは無理がある。CGなどでごまかせないので、当時としては仕方ないのかもしれない。