去年から少しずつ読んでいたコミック「愛と誠」を読み終わりました。文庫版(全10巻)です。原作・梶原一騎と作画・ながやす巧のコンビで描かれた少年漫画の傑作。1973年から週刊少年マガジンで連載されました。
今回読み直そうと思ったのは、昨年の西城秀樹の追悼企画で映画「愛と誠」を見たからです。この映画にはコミックの冒頭部が描かれていますが、原作のラストはどうなったかと気になっていました。年末年始の休みを利用してようやく読み終わりました。
西城秀樹主演の映画が原作の印象的な冒頭部をほぼ忠実なのはわかりましたが、その後のストーリーはかなり迷走していて、連載漫画のストーリーはどうしてもこうなるのかなと感じました。行き当たりばったりと言うのかなんというか……。ラストがきれいにまとまっているのはせめてもの救いです。
それでもこのマンガが時代の経ても不変の輝きを保つのは、テーマの純愛に普遍性があることと、ながやす巧の画力によるものでしょう。さすが天下を取った作品だけのことはあります。
当時青年誌がなかったこともあり、少年誌にもかかわらずなかにはきわどい描写もあり時代の流れを感じさせます。
ちょっと面白かったのは、終盤に国有地払い下げをめぐる汚職事件の描写です。まるで森友問題を想い起こすようなイベントですが、漫画の中ではマスコミも市民も大騒ぎしています。森友問題を冷めた視線を送る現代の世論とは隔世の感があります。この辺もやはり時代を感じざるをえません。
今の若い読者がどのような感想を持つか分かりませんが、漫画の古典としていちどは読んでおくべき作品です。