退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

愛希れいかサヨナラ特集の『宝塚イズム37』を読む

ひさしぶりに『宝塚イズム』(青弓社)を読みました。特集は「愛希れいかのさよならを惜しむ」、11月18日に退団予定の月組トップ娘役・愛希れいかの退団特集です。

6人の執筆者がそれぞれ彼女の宝塚人生を振り返りながら惜別を綴っています。さすがに、「さよなら特集」で辛口コメントを書く人はおらず、ほぼ賛美の嵐で気持ちよく送り出してやろうという内容です。

彼女の舞台を振り返ると、どうしても執筆者のあいだで重複した内容が目立ちます。続けて読んでいるとやや冗長に感じますが、よい振り返りになりました。ただし刊行された時期が、「愛聖女」や「エリザベート」が上演される前だということは留意する必要があります。この点は年2回の刊行ペースのメディアの弱みかもしれません。

「はじめに」で彼女を「自立した娘役の可能性を拓いた」と表現していましたが、そのとおりだなと思いました。平成期の代表的な娘役と言えば、長期にわたりトップ娘役を務めた花總まりをまず想起します。最後はタカハナとして一世を風靡した彼女ですら一歩引いたところがありました。それに対し、ちゃぴは相手役が龍真咲から珠城りょうに変わったあたりから、ぐいぐい前に出てくる印象でまさに「自立した娘役」という表現がぴったりでした。これまでにないタイプのトップ娘役です。

このムックではOGロングインタビューも楽しみですが、今回は早霧せいなを取り上げていました。ちょうどNHK「SWITCHインタビュー 達人達(たち)」の再放送で増田明美と共演したのを見たばかりだったので、OGロングインタビューも面白く読みました。やはりトップになる人はちがうなと感じ入るばかりです。

このムックは宝塚にフォーカスしているにもかかわらず、宝塚歌劇団の写真がいっさい載っていません。文章だけで読ませる硬派なメディアです。OG公演評やOGロングインタビューにはしっかりと写真があるに、これはどうしたことでしょう。

さきほど、さよなら特集はネガティブな内容はないと書きましたが、公演評では結構辛口の批評もあり、なるほどと思うことも多々ありました。過去に劇団批判を掲載して劇団の機嫌を損ねたのかもしれないなと勝手に想像してみました。何かしでかしたのでしょうか……。

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