新文芸坐で映画『ビューティフル・デイ』(2017年、監督・脚本:リン・ラムジー)を鑑賞。併映の『ケディ家の身代金』を目当てに出かけたので、こちらはノーマークの作品。原題は、You Were Never Really Hereだが、劇中のセリフからとったというへんな邦題がついている。
- 発売日: 2018/12/04
- メディア: Blu-ray
舞台はニューヨーク。戦場のトラウマを負った退役軍人のジョー(ホアキン・フェニックス)は、行方不明の少女を探し出して連れ戻す仕事で生計を立てていた。認知症の母と二人暮らしである。ある日、ヴォット上院議員から娘ニーナ(エカテリーナ・サムソノフ)の捜索依頼を受ける。いつものようにホームセンターで購入したハンマーを携えて、ニーナが監禁されている売春宿に潜入し彼女を救出することに成功するが……。
You Were Never Really Here – Official Trailer | Amazon Studios
戦争で負ったPTSDと薬物依存で人生を踏み外し、不健康に太った元軍人をホアキン・フェニックスが好演。役作りだろうが、みっともなくぜい肉がついた体に役者魂を感じる。決して楽でない母との救いようのない生活が哀しさが滲み出ているのもいい。
しかしトラウマを抱えて自己崩壊しそうなジョーの内面を描く演出は過剰で見ている方が疲れる。ラストシーンが典型例だが、ジョーの妄想と現実が混然としていている映像は、感情移入できる観客にはいいのだろうがが、そうでない人にとってはどう見ていいのか困るような演出に思える。
ラストに救出されたニーナとジョンが場末のレストランで食事するシーンがある。すべてを失ったふたりが絆を感じながら店を出ていく場面で終わる。ありきたりではあるがちょっといいエンディングである。
本作はスリラー映画だが監督が撮りたかったのは賞を狙えるような芸術的な映画であろう。この映画に没入できる人にとっては楽しめるが、個人的にはちょっと苦手なタイプの映画である。このテイストの映画を撮ったのが女性監督だということにも驚かされる。