退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『東ベルリンから来た女』(2012) / ニーナ・ホスのクール・ビューティーに乾杯

DVDで映画『東ベルリンから来た女』(2012年、監督:リスティアン・ペッツォルト)を鑑賞。ニーナ・ホス主演。東西冷戦下の東ドイツの田舎町。国外脱出を計画をする女医を描いたヒューマンドラマ。

東ベルリンから来た女 [DVD]

東ベルリンから来た女 [DVD]

1980年、東西冷戦時代の東ドイツの田舎町。女医バルバラ(ニーナ・ホス)は西側への出国申請をしたため、東ベルリンの大病院から田舎町の病院に左遷される。重大な医療ミスのため同じく左遷され当局に密告を義務付けられた同僚医師アンドラ(ロナルト・ツェアフェルト)は、バルバラに惹かれていくが、バルバラは職場で頑な態度を崩そうとしない。バルバラは、西ドイツに住む恋人ヨルク(マルク・ヴァシュケ)と密会し、逃走用資金を受け取るなど、当局の監視を目を逃れながら密出国の準備を進めるが……。


映画『東ベルリンから来た女』予告編

主演のニーナ・ホスが魅力的。年齢は30代半ばというところだろうか。彼女ありきの企画だったのだろうか、凛とした自立した女医役にぴったりだ。クール・ビューティーが光っている。とくに自転車に乗る姿が印象的だ。

舞台が東ドイツであり、日本人にとって馴染みがなくいまひとつ状況がわからないのは難点か。外国人向けにもう少し説明があってもいいだろう。主人公は秘密警察シュタージの厳重な監視下に置かれているが、これが今後も永続的に続くのかどうか。反体制分子として扱われてどの程度不利益を被るのか。また西側に亡命した場合、そのまま医師として働くことができるのか。などなど、いろいろわからないことが多い。

結局映画のなかでは、ざっくりと「自由で豊かな西の恋人」と「東に生きる誠実な男」との間で揺れるひとりの女、という回収のされ方をされている。しかし実際はそれほど単純ではないだろう。医師としての挟持や仕事のやりがいという要素もあるだろうし、他にも様々なしがらみがあるだろう。

結局、バルバラは西側に脱出せずに東ドイツに残留することを選択する。この映画の9年後にはベルリンの壁が崩壊し、否応なしに西側の人間になる。この時亡命しなかったことを後悔しなかったのか、その後ヨルクと結ばれたのかなど、後日談が気になる。

ほどよい余韻を残して後味のよい作品である。