「半分、青い。」は、これまでにない異色の朝ドラだった。2018年上半期放送のNHK「連続テレビ小説」第98作の作品。脚本は北川悦吏子(作)。
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そもそもタイトルが不思議だし、ヒロインも結婚相手に「死んでくれ」といい放つ朝ドラにふさわくないキャラクター。実在の人物を基にしていないので脚本はとても自由。脚本家の趣向が色濃く出ている朝ドラだった。
ヒロイン・楡野鈴愛(永野芽郁)が漫画家を志して故郷岐阜から上京し、人気少女漫画家・秋風羽織(豊川悦司)に弟子入りして、プロデビューするも挫折するあたりまではとてもいい。これは神ドラマかと思ったが……。
まず秋風のスタジオであるオフィス・ティンカーベルの雰囲気がいい。秋風塾でユーコ(清野菜名)とボクテ(志尊淳)と切磋琢磨するあたりも青春期の一コマとして微笑ましく見れる。個人的にはピンクハウス系のファッションで決めているマネージャーの菱本(井川遥)がツボだったし、くらもちふさこの作品が登場したのもうれしかった。
圧巻は鈴愛が漫画家としての限界を悟り、秋風に自分の才能なさを激しく吐露する場面。このあたりは脚本家自身の体験と重なる部分がおおいにあるのだろう。ここが最大の見どころ。
しかしドラマとしてよかったのはここまで。漫画家の夢が潰えて、鈴愛は100円ショップで働く。そこで知り合った森山涼次(森山涼次)と結婚し一女をもうけるが、あっさり離婚。結局、シングルマザーとなり岐阜の実家に戻る。怒涛の展開だがどうもピンとこない。
そしてこのドラマはヒロインと同じ日に生まれた幼馴染の萩尾律(佐藤健)とのラブストーリーも重要な要素である。鈴愛の漫画家編の描写は念入りだったのに対し、律のそれはテキトーである。
受験票がないという理由でセンター試験を受けられなかったというエピソードから、ちょっと変だと思ったが、大手電機メーカーのエリート社員がロボット部門が閉鎖されたぐらいで、起業してひとりで扇風機を作り始めるだろうか。「???」となる。エンジニアや研究者としてのキャリアを活かせるポストが他にあるだろう。なんで扇風機?
朝ドラにリアリティを求めても仕方ないが、工学部出身者としてはどうしても気になってしまう。プライベートでも、家族とともにアメリカに赴任するが妻は適応できずに、唐突に離婚してしまう。週末、家族関係が修復できたかなと思ったが、週明けに離婚していて驚いた。急すぎるだろう。どうなっているのか。
終盤では東日本大震災で親友ユーコを失う鬱展開。ラストはどうやってまとめるのだろうと気をもんでいたが、実家で扇風機の発売決定を祝い、アラフォーの鈴愛と律が抱き合って終了。ハッピーエンドで少しは救われて気がした。最後にもう一度豊川悦司や井川遥を出してほしかったが……。
無粋な話ですが、この扇風機は売れたのか、事業の継続性はどうなのか。最後まで気になった。
冒頭「異色の朝ドラ」と書いたが、このドラマもヒロインが田舎の暖かい家庭で生まれ育って、高校卒業後に上京するという枠組みは崩せていない。いい加減、この縛りをやめてもいいのではないか。