退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『暖流』(1957) / 野添ひとみ特集だったが左幸子がいいね

神保町シアターの《夢みる女優 野添ひとみ》という企画で『暖流』(1957年、監督:増村保造)を鑑賞。原作は岸田國士の同名小説だが、時代は戦後に翻案されている

破綻目前の病院の経営再建を任された日疋(根上淳)が、病院乗っ取りを企む院内勢力や浪費家の院長の息子らと闘う姿を、病院令嬢・啓子(野添ひとみ)と看護婦・ぎん(左幸子)との三角関係に絡めて描く。

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映画「暖流」/野添ひとみ(左)と左幸子

野添ひとみ特集だが、この映画で光っているのはだんぜん左幸子。看護婦のぎんは、日疋に院内の内部情報を集めるように頼まれるが、日疋への愛情とともに情報収集も次第にエスカレートしていく。彼女は異常に明るく、いつもケタケタ笑っていて不気味である。アクが強いキャラクターが最大の見どころ。

日疋は結局、ぎんを選ぶのだがどうも納得できない。ともに戦災孤児で同胞意識があるとはいえ、あんな不気味な女をどうして選ぶのだろうと思ってしまう。しかし男女の仲というものは案外、これでうまくいくのかもしれない。

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さて肝心の野添ひとみは院長の娘役。病院再建は成ったものの、病院と院長一家の会計は分離され、わずかの財産は残ったものの、院長は亡くなり一家は没落してしまう。前半のわがままな令嬢と没落後の自立した女性との対比に注目したい。

増村保造監督らしく、登場人物のキャラクターがはっきりしていて、みんな一途である。見ていてわかりやすいが、きっと原作はこうじゃないんだろうな想像する。なお原作は戦前、吉村公三郎監督により映画化されている。こちらもいずれ見てみたい。


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