退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『親不孝通り』(1958) / 親不孝というが親は登場せず

神保町シアターの《東西対決! 輝ける〈大映〉男優の世界》で、映画『親不孝通り』(1958年、増村保造監督)を鑑賞。後に結婚する川口浩野添ひとみのコンビによる、めっちゃ激しい青春映画。ソフト化されていないレア作品。初見。

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映画『親不孝通り』(1958年) /(手前)川口浩

姉(桂木洋子)を妊娠させて捨てた男(船越英二)へ復讐するために、弟(川口浩)は男の妹(野添ひとみ)を姉と同じ目に合わせようと狙いをつける。レイプすれすれのアタックを経てふたりは結ばれる。その後川口は野添を手ひどく振って復讐を果たしたかに思えたが、二人は本気で愛し合うようになっていた。その後、川口は改心し、きょうだい揃って2組のカップルとしてそれぞれ結ばれるというヌルい結末。復讐劇からハッピーエンドという落差は印象深いが、やや唐突すぎるようにも思える。まあこれぞ増村らしいともいえるが……。

川口は外人との賭けボーリングで小遣い稼ぎをするチャラい大学生。タイトル導入部のボーリング勝負でスコアシートを背景に出演者・スタッフのクレジットが出る斬新な映像に冒頭から引き込まれる。

タイトルの親不孝通りというのは銀座界隈にある、不真面目な学生連中がたむろする飲み屋が店を連ねるあたりらしい。ただし、登場人物には親はいないので、実際に「親不孝」を働くことはない。

その親不孝通りに店を構える飲み屋の主人を演じた潮万太郎がいい味を出している。いつもは学生連中に甘い主人が、自暴自棄になった川口に説教する芝居は見ごたえがある。

今回は大映男優の特集だったが、主演の川口浩もいいが、やはり冷血漢のエリートサラリーマンを演じた船越英二の存在が光る。黒い船越は必見。

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余談だが、本作は半世紀以上前の映画だが、当時の風俗が意外に新鮮に思えた。まず学ラン姿の大学生が目につく。いつから大学生は学ランを着なくなったのだろうか。私自身、大学時代、何を着ていくか考えるのが面倒だったので、学ランがあれば便利だっただろうにと思った。

またインスタントコーヒーの作り方も不思議だった。先にカップにお湯を注ぎ、後からインスタントコーヒーの粉末をスプーンも使わず瓶から直接ドボドボと入れていた。「え、これでいいの?」と思った。半世紀も前だと同じ日本でも別の国のようだ。

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