新文芸坐で『シェイプ・オブ・ウォーター』(2017年)を鑑賞する。ギレルモ・デル・トロ監督の作風を強く打ち出した究極のファンタジー・ロマンス映画。アカデミー賞で作品賞、監督賞を受賞。
冷戦下の米バルチモア。発話障害のある女性イライザ(サリー・ホーキンス)は、航空宇宙センターで掃除婦として働きながらアパートで一人暮らししていた。エリート軍人のストリックランド(マイケル・シャノン)の指揮下に、アマゾン奥地で捕獲された謎の生物が搬送されてきた。イライザは、この半魚人のような異形の生物と心を通わせ次第に親密になってゆく。
アメリカ上層部は、この生物を解剖することで生物の秘密を解明することを決める。これを知ったイライザは仲間たちの助けを得て生物の救出して、自分のアパートに隠して暮らすようになる。生物を捜索するストリックランドは次第に彼女を追い詰めるが……。
THE SHAPE OF WATER | Official Trailer | FOX Searchlight
もののけの類を匿うという映画といえば、『シザーハンズ』や『アイアン・ジャイアント』などが思い浮かび、ひとつのジャンルをつくっているとも言える。売れ線とも言えるが、マーケットにまったく媚びることない演出で、監督がかなり好きに撮っているようだ。
まずヒロインが地味な中年女性だということ。売りたいならもっと若い旬な女優をキャスティングするだろう。また随所にみられる直接的な性描写も、まったく子供向けとは言えないので、ターゲットを大幅に狭めている。さらに半魚人の造形に愛らしさがなく、私は好きだけど万人には受け入れがたいだろう。
これらは出資者の声が強ければ、「なんとかしろ」と言われただろうが、好きにやってアカデミー賞受賞だから、監督も得意満面というところか。
個人的には、イライザの脳内で半魚人とミュージカル仕立てでダンスを踊る場面が好き。もっとミュージカルもどきのシーンが長くてもよかったかも。宝塚風にいえば、デュエットダンス。なんでも取り込む宝塚歌劇団だが、トップが半魚人というのはさすがに無理か……。
分かりかりやすい純愛ロマンスで一本道のドラマだが、難点といえばイライザがどうして半魚人に惹かれたのかよく分からないこと。またふたりの愛の営みにもっとリアリティがほしかった。まあこれ以上生々しいと、いろいろ問題があるかもしれないが……。どうせなら思い切ってやってほしかった。