退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『傷だらけの勲章』(1986) / 西城秀樹主演のポリス・アクション映画

新文芸坐の《緊急上映 追悼・西城秀樹》という追悼企画で映画『傷だらけの勲章』(1986年、斎藤光正監督 )を鑑賞。主演は西城秀樹。『愛と誠』(1974年)との二本立て。

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エジプトを舞台に、日本の刑事・都筑(西城秀樹)が活躍する姿を描いたポリス・アクション映画。エジプトで大企業の社長が射殺され、その遺言状のありかを巡り周囲で様々な事件が続発する。事件の真相を解明するため都筑はエジプトに向かう……。

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当時、30歳すぎだった秀樹の主演映画。もうアイドルという歳ではなかったのだろうが、冒頭から朝加真由美との激しい濡れ場から始まり、後ろ姿だがセクシーなヌードも披露している。

共演者のなかでは、都筑の先輩刑事を演じた中村嘉葎雄がとくによかった。途中で自らの死を偽装して海外に逃亡し、アラブの民族衣装を着て再登場するが、衣装があまりに似合いすぎている。

他には射殺された社長夫人を演じたちあきなおみも印象深い。遺産を狙う性悪な悪女役だがこれも雰囲気がよく出ていた。ラストで、銃撃戦の末、秀樹にパートナーを射殺されたうえに砂漠の真ん中に置き去りされてしまう。命乞いするかと思いきや、そのままスルーだったので拍子抜けしたが……。

大和屋竺の脚本が冴えていて観客を飽きさせないし、豪華な共演者たちに支えられて野性味に溢れた秀樹を堪能できる。細かいことを言えばツッコミどころはあるが、海外ロケの映像の見事さもあり娯楽映画として十分面白い。この映画は初見だったが、西城秀樹を追悼するにはふさわしいで映画といえよう。

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ちなみに併映作は『愛と誠』(1974年)だったが、こちらは昨年夏にフィルムセンター(当時)で偶然見ていた。まさかこれほど早く秀樹の追悼企画で再び鑑賞することになるとは思わなかった。

余談だが、今回の新文芸坐はいつもの客層と大きく異なっていたことも印象的だった。秀樹のファン層を考えれば、それほど驚くこともないのだろうが、館内が中年女性で溢れかえっていて異様な活気があった。同窓会のように集まったグループも見受けられ、盛り上がりを見せていて、これまで見たことない光景だ。ロビーで販売されていたブロマイドにも長い列ができて売り切れが続出し、彼女たちの購買力のすごさには驚くばかりだ。

それにしても当時のファンが、これほど元気なのを目の当たりにすると、秀樹が他界したのは早すぎたなと思わずにはいられない。