退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『15時17分、パリ行き』(2018) / イーストウッド監督しか撮れない映画

新文芸坐で『15時17分、パリ行き』(2018年)を鑑賞。アムステルダムからパリに向かう高速鉄道タリスで実際にあったテロ事件と、それに果敢に立ち向かった3人の米国人の若者を描く。主演の3人は実際に事件に遭遇した3人を本人役として起用している。クリント・イーストウッド監督ならではのヘンな実録映画。

主人公3人が出会う少年時代(さすがに子役が演じている)は普通によくできたジュビナイル映画だし、青年になって主人公のひとりが空軍を目指して奮闘するのは青春映画だし、3人でヨーロッパを旅するのは楽しい旅行映画だし、列車で武勲を上げるシーンはアクション映画、そしてフランス大統領から受勲するのは記録映画といったぐあいにごった煮のような映画。役者としては素人の3人の演技が意外によくて好感がもてる。

基本的には列車内で乱射事件を画策するテロリストを事前に制圧した英雄譚なのだが、主人公たちはエリート軍人ではなく、どちらかと言えば挫折を経験している冴えない若者である。それでも、いざというときに行動を起こしてテロリストに立ち向えたのが英雄であり、人々の感動を呼ぶのだろう。


THE 15:17 TO PARIS - Official Trailer [HD]

だだし列車での制圧シーンを見ると、かなり危うかった様子がわかる。AK-47ライフルを構えるテロリストに逃げ場のない列車の通路を突進するとか正気の沙汰でない。たまたま不発だったから組み伏せたけれど、発砲されたら万事休す。しかも単独犯かもわからない状況であの猪突猛進はないだろう。結果オーライというが、一歩間違えば大惨事となっていた可能性が高い。

一見無謀とも思える行動にも惜しみない称賛が与えられるのが欧米なのだろうか。日本とは少し感覚がちがうかもしれない。

終始ヘンな映画なので、映画らしい面白さはそれほどでもないが、尺が短いこともあり嫌味のない映画に仕上がっている。最後まで飽きないで見ることができる。なんとも不思議な映画だった。

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