映画『美味しんぼ』(1996年、監督: 森崎東)を鑑賞。雑誌「ビッグコミックスピリッツ」にて連載中(現在、長期休載中)の同名コミックの実写映画化作品。
原作コミックを大胆に脚色しているため、基本設定だけをそのままにしてほとんどオリジナル作品となっている。配役を見ていくと、山岡士郎役を佐藤浩市が、海原雄山役を三國連太郎がそれぞれ演じている。この配役は、実の親子である佐藤と三國が親子役を演じることで話題になった。さらに当時、三國・佐藤の親子には確執があり、映画の設定そのものだったという。
キャラクターのルックスで違いが目立つのは海原雄山。原作ではのっしのっしと迫ってくる巨躯だったが、映画で三國連太郎が演じている雄山は、圧迫感はなく穏やかなキャラクターになっている。雄山のモデルとされる北大路魯山人により近いとも言える。
またキャストでは栗田ゆう子役の羽田美智子はちょっとちがうのではないか。個人的なイメージでは和久井映見に演じてほしかったが、あくまでも個人的な嗜好です。
あと映画のオリジナルキャラクターとして、元美食倶楽部の支配人の娘で士郎を兄のように慕う里見(遠山景織子)が登場する。病弱でなぜか煮豆を食べたいと士郎にせがむ。ここから料理対決に発展して、士郎が街で豆売りに出るというシーンまである。よく考えてみればおかしな話ではあるが、なかなか感動的なシーンで妙に納得してしまった。
原作コミックのファンは気に入らないかもしれないが、出来上がった作品をみると一本の松竹映画として成立しているのは立派なもの。コミックの実写化は難しいとされるが、これだけ思い切りよく設定変更されるとかえって腹が立たないものかもしれない。あと劇中の料理対決に原作のアイディアが使われているのはファンにとってうれしいだろう。
ちなみに「美味しんぼ」は何度かテレビドラマ化されて、これまで唐沢寿明と松岡昌宏が士郎役を演じている。テレビドラマでは、雄山をコミックのキャラデザインに近づけようとしているためか、まるでマンガのようになっている。漫画原作だからテレビドラマはそれでいいのかもしれないが、映画ではそういうわけにはいかなかったのだろう。思い切って設定を変更したのは、よい判断だった。