退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『沖田総司』(1974) / 草刈正雄みたいに濃い顔の沖田総司はいねえよ…

東京国立近代美術館フィルムセンターの《特集・逝ける映画人を偲んで 2015-2016》で映画『沖田総司』(1974年、監督:出目昌伸)を鑑賞。俳優としては駆け出しの草刈正雄沖田総司に扮した異色時代劇。

これまでの青白い美剣士というイメージを払拭して、ハーフの草刈正雄沖田総司役に抜擢した異色作。沖田総司草刈正雄)が雄叫びを上げながら屋外を疾走する冒頭シーンに圧倒される。脇を固める土方歳三高橋幸治)、近藤勇米倉斉加年)がしっかり支えているため、草刈が浮いていない。

この映画はほとんど時代背景の説明がない。テロップ付きで人物が次々に登場して、「芹沢鴨の暗殺」「池田屋襲撃事件」「山南敬助の脱走」など、新撰組にまつわる有名なエピソードが駆け足で続く。尺のわりに詰め込みすぎだろう。芹沢鴨小松方正が演じていて期待が高まるが、ほとんど見せ場がなくあっけなく暗殺されて拍子抜けする。もったいない。

沖田を慕うヒロインを演じるのは真野響子。沖田とはプラトニックな関係でやや物足りない。髪を洗う場面が美しい。と、思ったのもつかの間、次のシーンでは長州浪人に理不尽にも惨殺されれる。復讐に燃える沖田が長州浪人を見つけて斬りまくるシーンが見どころ。

その後、鳥羽伏見の戦いを経て、沖田は江戸で不治の病で床に伏していたが、庭に出て猫を斬ろうとするがままならず、そのまま息を引き取る。沖田総司、25歳のときだった。

細かい人間関係を描く暇はなかったのだろうが、沖田の短い生涯にフォーカスしたのは結果として奏功している。異色の青春時代劇として振り返る価値のある作品である。若き日の草刈正雄の魅力が詰まっている。

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