新文芸坐の《シリーズ「映画と歴史」(1) 映画に刻まれたナチスの爪痕》という企画で、映画『奇跡の教室 受け継ぐ者たちへ』(2014年、監督:マリー=カスティーユ・マンシオン=シャール)を鑑賞。フランス映画。
パリ郊外の高校を舞台に、落ちこぼれクラスの教壇に立つベテラン教師・アンヌ(アリアンヌ・アスカリッド)が生徒たちを導いて、全国歴史コンクールで優勝するまでを描く。生徒が少しずつ変化してく様子が見事に表現されている。
このコンクールのために取り組んだテーマがアウシュビッツ強制収容所。その生存者が教室に招かれて生徒たちに語りかけるシーンがクライマックス。学級崩壊直前のクラスを情熱を持って指導する教師の姿も胸を打つ。「教員歴20年。教えることが大好きで退屈な授業はしないつもり」という先生は日本にいるだろうか。
実話を基にした作品であり、映画ならではのカタルシスがあるわけでもないが、フランスの教育事情の一面を見るのは興味深い。冒頭、イスラム教徒が校内での顔を覆うスカーフ着用禁止に抗議する生徒が描かれる。さらにクラスが多様な人種から成ることが描かれ、フランスが直面している問題の一端が伺える。
また、以前見た映画『パリ20区、僕たちのクラス』(2008年)でも感じたことだが、クラスの生徒数が少なく、教師の裁量が大きいことも印象的だ。生徒の成績を決める会議に保護者や生徒代表が参加しているのも面白い。
日本も少子化に伴い、移民受け入れの是非が取りざたされる段階に来ているが、教育の変革までを視野に入れた包括的な議論が必要だろう。移民先進国のフランス映画を見てそんなことを感じた。
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