先日、国立新美術館で開催中の「ミュシャ展」を見てきました。アルフォンス・ミュシャ (Alfons Maria Mucha, 1860-1939)は、アール・ヌーヴォーを代表する芸術家の一人。彼の晩年の作品《スラヴ叙事詩》が今回の展示会の目玉です。
オーストリア領モラヴィア(現チェコ共和国)に生まれ、ウィーンやミュンヘンを経てパリに渡ります。そこで下積み時代を過ごすが女優サラ・ベルナール主演の舞台「ジスモンダ」のポスターを手がけて、一躍時代の寵児となり、アール・ヌーヴォーの旗手として大成功を収めます。その後、50歳で故郷に戻り、晩年はスラブ民族の歴史を映し出す、縦6メートル、横8メートルに及ぶ巨大なカンヴァスに描かれた20点の油彩画《スラヴ叙事詩》の制作の心血を注ぎます。
正直言うとミュシャのパリ時代のイラストレーターとしての創作の方が興味がありますが、今回は《スラヴ叙事詩》を目当てに出かけました。あまりに大作なのでいつもの美術展とは雰囲気がちがいます。絵画としては面白みに欠けるようにも思いますが、一度実物を見ておく価値は十分にあるでしょう。
写真撮影が許可された展示室があったの写真を紹介します。これぐらい作品が大きいと会場が多少混んでいても問題ありませんが、それにしても大変な混雑でした。
個人的に興味があるのは、名声を得たあとで故郷に帰ろうと思ったミュシャの心境です。パリで暮らしていれば、より豊かなで文化的な生活を送れたと思うのですが……。また国家を超えたスラブ民族としてのアイデンティティという考え方も日本人には分かりにくいかもしれません。
ちなみに「ミュシャ」という表記はフランス読みで、チャコ語では「ムハ」となります。音声ガイドは2つの呼称を使い分けていて面白いと思いました。
おそらく私が生きている間に、《スラヴ叙事詩》が日本で再び公開されることはないでしょうから、近くの人は是非実物を見ておくことオススメします。インパクトはあります。