新文芸坐の《シリーズ「映画と歴史」(1) 映画に刻まれたナチスの爪痕》という企画で、映画『栄光のランナー/1936ベルリン』(2016年、監督:スティーヴン・ホプキンス)を鑑賞。原題は"RACE"という言葉遊びを思わせる洒落たタイトルになっている。
1936年のナチス政権の下で開催されたベルリンオリンピックで史上初の4冠を達成したアメリカの黒人陸上競技選手ジェシー・オーエンスの半生を描いた伝記映画。貧しい家庭で育ったジェシー・オーエンス(ステファン・ジェームス)は陸上選手としての才能を認められ、家族の期待を一身に背負いオハイオ州立大学に進学。そこでコーチのラリー・スナイダー(ジェイソン・サダイキス)と出会い、オリンピックを目指すことになる。
中西部のオハイオはもとより米国では黒人差別が一般的だったなか、さまざまな差別に耐えながらオリンピック出場権を得るオーエンス。そしてベルリンオリンピックでもナチスによる陰湿な人種差別が待っていた。そうした過酷な環境でリレーを含む4種目で金メダルを獲得するオーエンスの快挙が描かれる。
RACE - Official Trailer - In Theaters February 19, 2016
比較的よく知られた実話ではあるが、改めて映像化されると陸上競技の緊張感とともに映像に惹き込まれる。ちょっと面白いのは、本作に映画監督のレニ・リーフェンシュタールが記録映画『オリンピア』を撮影するために登場していること。大規模な撮影体制が再現されていて興味深く見れた。
また、おそらくCGだろうがスタジアムの俯瞰も映画に登場するが、今度の東京オリンピックの国立競技場よりずっとカッコいい。国威発揚のためとは言え、ドイツ人は本気出すと有能だなと思った。