新文芸坐で映画『ハドソン川の奇跡』(2016年)を鑑賞。2009年に実際に起こったUSエアウェイズ1549便不時着水事故の奇跡的な生還劇を、巨匠・クリント・イーストウッド監督が映画化。
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- 発売日: 2017/01/25
- メディア: Blu-ray
離陸直後にバードストライクで両方のエンジンの推力を失い、機体はコントロールを失う。機長チェスリー・サレンバーガー(トム・ハンクス)の冷静は判断と、卓越した操縦技術によりハドソン川に機体を不時着させて、ひとりの犠牲も出さなかった。
奇跡の生還劇とマスコミに賞賛された機長だったが、国家運輸安全委員会(NTSB)により事故の原因調査が行われる。ハドソン川への不時着が適切な措置だったのか厳しい追求を受ける。
最初、離陸から不時着するまでわずか5分程度の出来事をどのように一本の映画にするのかと思ったが、機長の葛藤やパイロットとしてキャリア、そして事故原因の調査などの後日談を交えて映画として成立させている。
もちろん不時着するまでの緊迫した機内の様子もスリリングだったが、いちばん興味深く見たのはアメリカの原因調査の公聴会の様子。フランスのエアバス社と回線をつないで、エアバス社のシミュレータにより事故を再現させるあたりは、普段見れないものを見れてお得感があった。
また川に不時着するシーンはCGだろうが、不時着後のシーンは実際に中古のエアバスを水に浮かべて撮影したそうだ。エアバスの翼の上に乗客が乗り救助を待っているシーンがそうなのだろうが、さすがハリウッド映画である。とことんリアリティにこだわる姿勢がすばらしい。ぜひ映画館で見てほしい映像である。
事故の原因調査の結果、エンジンは完全に停止していて、機長の適切であることが証明される。機長の判断が少しでも遅れていれば大惨事になっていたことも判る。英雄譚と言ってもいい映画であるが、どうしてクリント・イーストウッドは映画にしようと思ったのだろう。
ラジオでこの映画について語った町山智浩さんによれば、クリント・イーストウッドは朝鮮戦争中に不時着水を経験しているとのこと。その経験がどの程度影響しているか分からないが、立派に映画化した上に興行成績も叩き出すあたりはさすがというべきだろう。