退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『多羅尾伴内』(1978) / 小林旭版シリーズ第1作

YouTubeの「TOEI Xstream theater」チャンネルで配信されていた、映画『多羅尾伴内』(1978年、監督:鈴木則文)を鑑賞。主演は小林旭。先週は『きんびら』というヌルい映画だったが、今週はチャンネルに相応しいエクストリームな作品。

大観客で湧く球場でプロ野球選手・高塚が怪死を遂げる。検死の結果、アイヌが熊狩りに用いる猛毒を塗った針による他殺と判明。翌朝、新聞社のカメラマン川瀬も同じ手口で殺される。私立探偵・多羅尾伴内小林旭)は、川瀬の妹・ゆう子(竹井みどり)から真相究明を依頼される。伴内は調査の末、北海道のある事件が関係していることを突き止めるが……。


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東映の大スターだった片山千恵蔵の当たり役だった多羅尾伴内を、小林旭主演でリメイクした作品。小林旭と言えば、日活アクションスターのイメージが強いが、当時は東映に籍を置いていた。荒唐無稽なヒーローを堂々と演じきっている。さすが銀幕スターと手を叩きたくなる。かっこいい。

多羅尾伴内といえば七変化だが、劇中でギターの流しに扮して小林旭自身の持ち歌「昔の名前で出ています」を披露しているのは見どころ。他にも八代亜紀アン・ルイスキャッツ・アイなどが劇中で歌っていて、歌謡曲ファンにとってはうれしい一本。

ミステリーとして見るとどうかと思う部分も多いが、そんなことは二の次にして娯楽映画に徹した演出は、さすが鈴木則文監督。大満足。

もっとエログロにもできただろうが、抑えた演出がかえって功を奏している。女優陣を見ていくと、夏樹陽子が復讐を謀るアイヌの女を演じているが、背中を出す程度の露出で大事なところはしっかりガードしていたり、三崎奈美がアイドル歌手・穂高ルミを演じていて、きっとお色気要員だろうと思っていたが脱がない。その代わりというワケでもないが、穂高の殺害シーンはなかなかにショッキング。これは実際に宝塚歌劇団で起きた事故をヒントにしているとのこと。

小林旭多羅尾伴内は、山口和彦監督により第2作『多羅尾伴内 鬼面村の惨劇』(1978年)が撮られたが、こちらはグロすぎて興行成績は振るわず、シリーズは2作をもって打ち切りとなった。無念。