退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『十八歳、海へ』(1979) / 予備校生の心中ごっこの顛末…

新文芸坐の《没後20年 藤田敏八 あの夏の光と影は ~20年目の八月》で映画『十八歳、海へ』(1979年)を鑑賞。中上健次の短編小説が原作。映画『サード』(1978年)の主演コンビ永島敏行と森下愛子が再共演になる。

予備校の夏期講習で知り合った有島佳(森下愛子)と桑田敦夫(永島敏行)は、夜の海に出かける。そこでバイクの青年・森本英介(小林薫)が暴走族に絡まれているのを目撃する。森本は暴走族のリーダーと、石をだいたまま海の中にどれだけ進んでいけるかを勝負し勝利する。佳と敦夫はこれを真似して海に入っていく。そので散歩中の老人(小沢栄太郎)は心中だと思い二人を助け、屋敷に連れていき小切手を渡す。この「心中狂言」に味をしめた二人は次第に深みにはまっていき、ついには重大な結末を迎える。


十八歳、海へ

原作は未読だが中上健次の文学的で観念的な原作と、藤田敏八監督のけだるい軽い演出が相容れずに上手く消化されていないように思えた。どうしてこれを映画にしようと思ったの分からないが、やはり映画『サード』ありきの企画だったのだろうか。

出演者のなかでは、そもそも軽薄さが持ち味の森下が大学受験の模試でトップをとるほど頭がよさそうに見えないところが難点。これはミスキャストじゃないだろうか。一方、バイクの青年・森本を演じた小林薫が際立ってよい。当時、映画の経験はほとんどなかったというが、唐十郎の劇団で鍛えられただけのことはあり、さすがに上手い。予備校生にしては年上だと思っていたら、予備校生活5年の強者という設定だった。

また女優では森下より、佳の姉を演じた島村佳江が美しい。小林薫とふたりで行くモタ島のシーンも外国情緒があってよかったが、海外ロケする予算があったことに驚きだ。ふたりの濡れ場もあったが、森下より露出は控え目なのは、主演女優を引き立たるためなのだろうか。

森下愛子ももちろん脱いでいて美しい肢体を披露しているが、この映画では小沢栄太郎のふんどし姿も見ることができる。こちらの方が貴重かも。

ラストでは、主演コンビが「心中ごっこ」をしているうちに本当に死んでしまい、その知らせが森本にその知らせが届く。またまた突き放したような結末だが「愛のない心中」はなかなか理解できない。当日の併映作品は『もっとしなやかにもっとしたたかに 』だったので、森下愛子主演作の二本立てだったが、『もっとしなやかに〜』の方が好みだった。

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