新文芸坐の《追悼 渡瀬恒彦 銀幕に刻まれた不死身の役者魂》という企画で、映画『極悪拳法』(1974年、監督:小沢茂弘)を鑑賞。アクション映画のイメージがあまりない渡瀬恒彦が空手二段の腕前を存分に発揮した東映アクション映画。
第一次大戦中、日本の動向を探るため各国はスパイを送り込んでいた。軍部からスパイ狩りを請け負った愛国組織・東狼会の創始者・黒田東天(大木実)は、自由奔放に暮らしているも稀代の拳法家である桜木鉄拳(渡瀬恒彦)を雇い入れる。死闘の末、スパイの首魁(天津敏)を討ち取るが、その後も情報漏えいが続いたのを不審に思った軍部は別組織が動いていることを掴む。裏で情報を流していた黒田は、追求の手が及びそうになると、鉄拳をスパイに仕立てて抹殺しようとする。鉄拳は刺客を返り討ちにした後、東狼会に殴り込みをかけて怒りとともに黒田を倒す。
ざっくりこんな話だが延々とアクションシーンが繰り返されてストーリーらしいストーリーはない。アクション俳優という印象がない渡瀬恒彦が高い身体能力発揮してなかなか見応えのあるアクション映画に仕上がっている。
この映画のいちばんの見どころは、ガッツ石松と沢村忠がホンモノの格闘技を披露していることだろう。周囲の役者たちとは動きのキレがちがう。沢村の電光石火のキックは必見。沢村はラストで渡瀬とともに殴り込みに参加していて、セリフも多く重要な役を演じている。当時、役者へ進出することに色気があったのだろうか。
それなりに楽しめる映画だったが、やはりこうしたアクション映画といえば同じ東映で活躍した千葉真一を思い出す。この枠に二人は要らないということなのか、渡瀬がアクション俳優として売り出されることはなかったが、ちょっと惜しい気もする。