退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

【映画感想】『眠狂四郎 卍斬り』(1969) / 松方弘樹版「眠狂四郎」第2作

新文芸坐松方弘樹追悼企画《「無冠の男 松方弘樹伝」刊行記念 追悼 松方弘樹 演じた! 作った! 撮った! 映画をこよなく愛した最後のスター》で、『眠狂四郎 卍斬り』(1969年、監督:池広一夫)を鑑賞。大映映画。

市川雷蔵の当たり役・眠狂四郎東映からレンタル移籍した松方弘樹が継いだシリーズ第2作。岸和田藩と薩摩藩の争いに巻き込まれる狂四郎が描かれる。

第1作「〜円月殺法」は陰翳のある大映らしい映像だったが、本作は一転して劇画調の演出となり好対照をみせる。殺陣で手足が飛ぶような派手な演出は、後の若山富三郎版「子連れ狼」シリーズを彷彿とさせて個人的には嫌いではないが、眠狂四郎にはふさわしくないだろう。

そして殺陣は派手だが、エロティックな描写については抑えた表現なのは、「大映コード」によるものだろうか。東映ならば裸体乱舞となっていたに違いない。

また、この映画には薩摩藩の刺客として狂四郎を襲う、異人の血を引く虚無僧役で田村正和が出演していることにも注目したい。田村正和は、後年テレビ時代劇で眠狂四郎を当たり役としているが、本作で松方が演じる狂四郎と対決しているのは見どころ。

さて松方版眠狂四郎は今見ると決して悪くないのだが、興行的に振るわなかったのか結局2作しか製作されなかった。やはり雷蔵のイメージが強かったのだろう。ちょっと惜しい気もする。あまり振り返られる機会のない作品だが、今回ニュープリントで見ることができてよかった。

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