安倍政権にただならぬ影響力を持つという「日本会議」の名前を聞くことがあっても、正面から取り組んだ本はこの本が初めてではないだろうか。その後、この本が売れたからなのか同じテーマを扱った本を書店で見かけるようになった。
- 作者:菅野 完
- 出版社/メーカー: 扶桑社
- 発売日: 2016/04/30
- メディア: 新書
ネットメディアの連載をまとめたという本書は読みやすいわけではない、しかし関係者へのインタビューや資料調査など地道な取材に基づく力作で読み応えがあった。
読んでいて薄ら寒くなったのは、日本会議の淵源が70年安保の学生運動にまで遡ることができるということ。長崎大学の学園正常化に組織の源を見出すことができることを緻密な取材により明らかにしているのは特筆できる。
また市民運動は長い間左翼の専売特許と思われ、嘲笑の対象にすらなっていた時代があった。それを乗り越え愚直に地道な市民運動を民主的に「右傾化」を模索し続けてきた人たちの努力が結実し、いまや政権に多大な影響を持つまでになった経緯を知るにつけ驚くばかりである。
こうした長い積み重ねを持った運動に対し、SEALDsのような連中が国会前で騒いでいるぐらいで対抗できるはずもない。大人と子どものケンカである。
この本を読みながら、この国はどうなってしまうのか不安になった。日本のリベラルはどこに行ってしまったのだろう。