退屈な日々 / Der graue Alltag

将来の展望が見えない現代。それでも映画や本を楽しみ、ダラダラと過ごす日常を生暖かく記録する。

「福岡女子大訴訟で原告男性が訴え取り下げていた件」が雑誌記事になっていた

昨年、福岡女子大から入学願書を受理されなかった20代の男性が大学側を相手取り、受験生としての地位の確認を求めて福岡地裁に提訴した一件を書いた。これは「法の下の平等をうたう憲法14条に反する」という違憲訴訟でもあった。

この訴訟は、結局原告男性が訴えを取り下げる形で幕引きとなったがどうも釈然としなかった。最近、この一件を追った雑誌記事を教えてもらったので紹介したい。雑誌「新潮45」(2016年9月号)に載っていた、ノンフィクション作家・福田ますみによる「『男でも女子大を受けさせろ』訴訟の顛末」という記事である。3ページほどの比較的短い記事だが訴訟取り下げの経緯が分かって有意義だった。興味のある人は読んでみるといいだろう。

要は原告は「経済的な理由で私立に行けない」「訴訟救助を申し立てた」にもかかわらず、経済的な窮状を裁判官に納得させることができなかったようだ。ちなみに弁護士費用は法テラスによる援助を申請して、こちらは認められている。

つまり違憲を争う前に、元々の「経済的理由で私立に行けないから男性だが公立女子大を受けさせろ」という大前提が崩れてしまった。裁判所は、原告の生活状況、資産状況を示す資料の提出を求めたが、ほとんど資料の提出をしなかったとのこと。これでは本当に女子大に進学する気があるのか疑われても仕方あるまい。

それでも口頭弁論は開かれていて、大学が男子の入学を認めないのは憲法違反であるとの原告の主張に対する大学側の反論が載っていたので引用する。

現状では女子の進学率はまだまだ低く、女子のリーダーを育成するためには、人工的に女子のみの教育環境を作り出す必要がある

いやいや、本当にそれでいいのだろうか。社会に出れば男女が共存する社会でリーダーシップを発揮してもらわなければ意味がない。こうした温室のような環境で真のリーダーシップを育成できるものだろうか。

この口頭弁論だけ見てもいろいろ面白いのだが、既に述べたように原告男性が訴えを取り下げたため残念ながら憲法判断にまで至っていない。やっぱりケチはいけないというのがオチのようだ。